口腔がんとは?
お口の中にできる悪性腫瘍(悪いできもの)を指します。例えば、舌、歯茎、唇、顎、頬の内側等に発生し、一番頻度多いのが舌、次いで歯茎です。発症原因は、粘膜への慢性的な刺激*や細菌感染などのほか、喫煙や飲酒も口腔がんの引き金になりやすいですが、残念ながらそのような心当たりが無いのに罹患してしまう方もいます。(*刺激とは、尖っている歯や詰め物、入れ歯、矯正装置、虫歯や歯周炎などによるものです。)初期の口腔がんの場合、自分で病変に気づくことは少ないと言われています。
口腔がんにかかる人、口腔がんで亡くなる方は年々増えています。口腔がんの発生頻度はすべてのがんの中でも1〜4%と低い数値でどちらかというと珍しいがんであり、実際に口腔がんを見て触れたことがある歯科医師はかなり少ないのが現状です。口腔がんは見た目だけでは単なる口内炎や歯周病の一症状に見えることもあります。
私が口腔外科勤務時代に出会った口腔がんの患者さんは、口腔外科に訪れるまでは他の一般歯科医院で入れ歯を調整し続けるのみであったり、レーザーで焼いてしまったり、歯を抜いてしまったり、その結果早期治療が遅れるのみならず病変が悪化してしまうという、同じ歯科医師として大変胸の痛い思いを経験することも正直珍しくはありませんでした。
口腔がんは確実な予防策はありません。お口の中をきれいにして、健康的な生活を送ることはもちろん、口腔がんは早く見つけて早く治すことが大切で、初期の段階で治療をすれば十分に元通りの生活ができます。しかし、気づかぬうちに進行してしまうと大きな手術や他の治療(抗がん剤や放射線治療等)の併用が必要になります。
その結果、命は助かっても、食事や会話がしづらい生活になってしまうかもしれません。しつこいようですが、とにかく早期発見、早期治療が大切なのです。
口腔がんを調べる目的で、口腔外科が入っている総合病院や大学病院(いわゆる高次医療機関)を受診するためには緊急事を除き基本的には一般医院からの紹介状が必要です。
当院で口腔がん検診を行い、高次医療機関へ紹介する必要がある方や少しでも不安要素のある方は、ご相談の上早急に紹介状を書かせていただきます。
口腔がんにも様々なタイプがあり、高次医療機関で詳しく検査を行わないと分からないものもあります。口腔がんの大半は粘膜に発生しますが、組織の深い場所や、顎骨の中や、唾液腺の中にできる比較的稀ながんは当院の行うような簡易的ながん検診では発見することが難しいです。また、検診を行った時はがんが見つからなくても、1週間後、1か月後のお口の中は分かりません。脅かす訳ではありませんが、口腔は体の中でも変化(ターンオーバー)が早い所なので、いつ状況が悪くなるかは分かりません。お口の中に対しても日頃より気に留め、粘膜等が痛い場合や腫れている状態が続く場合はご相談いただくことをお勧めします。